Dr. Goodacre's YouTube
グッドエイカー博士のユーテューブ
Mark Goodacre が2004年に収録した"Who Wrote the Bible?" ものを YouTube で紹介している。今より少しハンサムに見える。まだ、イギリスのバーミンガムにいた頃のものだ。イギリスの発音に慣れないと聞き取りにくいが、ローマの地下集会所兼墓地であるカタコームの様子などが映し出されている8分間の動画だ。彼のブログにあったものだが、ここに転載する。
イエスの十字架上の死後、30余年も経った頃、ローマ皇帝ネロが64年のローマ市の大火の犯人としてキリスト教徒を名指し、いわれなく彼らを迫害し、ペテロもパウロも殉教の死を遂げる。この時期に(70年前後)現存する(あるいは現存云々にかかわらず)最初の福音書を書いたのはマルコであった。自分が目にしたものとして直接イエスの事跡を語れる古老が、高齢や殉教で世を去るのに伴い、マルコはイエスの事跡を書き留める必要を感じたのであろうか。
次に、マタイがマルコを元に書き直したことは、ほぼ明らかである。まさに、マルコそっくりの箇所が幾つもあるからである。著作権もないし剽窃(plagiarism 盗用)という考えもないから、使えるものはそのままマルコを使ったが、イエスの長い説教(山上の垂訓)もないし復活のイエスの姿もないし、またイスラエルの歴史にとっても不十分と思ったのであろう。マタイとしてはマルコの不十分な点を自分が補うつもりだったのかもしれない。
ルカは、同様にマルコを援用した。しかし、イスラエルに目を向けていたマタイとは別で、ローマの世界でも通用する常識的で普遍的な福音の伝達を試みたと言える。最後に、ヨハネは特殊な福音書だ。イエスの事跡をもう一度神学的なあるいは思念的な面から洗い直して、マルコ、マタイ、ルカとは一味違った観点から福音書を著した。
キリスト教徒は、古代からこれら4種の(外典の問題は別として)、ときには相矛盾する記述の福音書をあえて一つにまとめることはせず(歴史的にタチアヌスが個人で試みた Diatessaron という例はあるが)、いずれもイエスの生涯と弟子たちの働き、そして神のメッセージを伝えるものとして後代に受け渡してきた。
都合の悪いところを切ったり、余計なものを付け足さず、この4種の福音書がそのまま今日に伝えられていることを感謝したい。また、我々もこのまま後世に残して行きたいと思う。