Jesus' Siblings - 2
イエスの兄弟姉妹 No. 2
Wado さま、Obrigado! しかし、http をドラッグして試しましたがやはり駄目でした。ともかく、ご丁寧にありがとうございます。
ところで、今日の夕方、私の細君が突然、「『ありがとう』は日本語じゃないよ。有り難いから、有難うなんてコジツケ。日本語に沢山根付いたポルトガル語の一つ obrigado ね。本当の日本語なら『かたじけない』だもの」だと?! 本当? 誰か教えて。
皆様、宿題どうでした。
普通は、「聖書によれば、妹は二人以上は確かだが、何人かはわからない。同様に名前まではわからない」と答えて花丸OK なのだが、これ以外の答のある人は、相当のイエスの家族調べオタクに違いない、多分。
初めにすべてを初期化してみよう。
余談だが、今回と前回のエントリーの英語 sibling(s) という言葉は、普通「兄弟姉妹」と訳される。つまり、男女を問わない兄弟(日本語でも「女の兄弟」という言葉がありますね)のことです。Brothers and sisters を siblings (シーブリングズと発音)と言うわけです。しかし、厳密な英語を使いたがる人は―どこにもいるんですね、こんな物知り顔の理屈屋は―両親が共通していなければならないと言います。だから、片親が違う兄弟姉妹は sibling(s) と言ってはいけない。Half-brother(s) とか half-sister(s) と言うべきだと。これに従えば、イエスの父親だけが神(聖霊)なのであるから、siblings がいるはずがないと叱られてしまう。
イエスが長男と前回と前々回に書いたが、これも、ごく初期のキリスト教徒や啓蒙期以降のプロテスタントの理解であって、キリスト教二千年の歴史では少数派かも知れない。むしろ、末っ子という解釈もある。兄と弟の区別が付かないギリシア語本文だけからはわからないのである。だから、初めにすべてを初期化してみよう。
妹(というより姉か)は二人で、上がサロメ、下がマリアと答える優等生のあなたに。
よく知ってるね。サラミスの僧正だった Epiphanius という人が4世紀の終わりごろに Πανάριον(Panarion と読む、「薬箱」という意味)という本を書いた。この僧正様は、自分が正しい教え(正統) を守るとの自負心から、80種類の間違った教え(異端)を事細かに記し、この薬箱のワクチンで身を(教会を)守りなさいと勧めた。Frank Williams という人が数十年かけて全部を英語に訳している。2冊本で、日本で買えば合わせて15万円くらいするだろう。アメリカでも5、6百ドルはする。今朝、このブロッグで正確を期すために図書館から借り出してきたのだが、第一分冊は誰かが借りていて見ることができなかった。しかし、どっこい、サロメとマリアだと書いてある部分は第二分冊だ。この巻の7にある78番目の異端(あくまでも Epiphanius の判断による異端) Antidicomarians (またの名は Dimoerites) というイエス・キリストの神性ではなく人間性に重きを置く一派を攻撃した一節にある。
この Epiphanius (ラテン読みでエピファニウス)先生は、どうやらユダヤ人系のキリスト教徒で、俺はそこいらの歴史にも明るいなどと威張っている。彼によると(あくまでも彼によると)、イエスの母マリアの夫となるヨセフは、死別した前妻との間に4男(ヤコブ、ヨセ、シメオン、ユダ)2女(サロメ、マリア)があったが、年老いて神様の指示でマリアと夫婦になったものの、 no sex でマリアは生涯処女であったと言うのである。
また、こうも言う。イエスの母マリアの夫ヨセフの前妻は6人の子をもうけたが、ユダ族の出であると(つまり、ダビデの子孫)。ヨセフの父の名はヤコブだが、そのあだ名は Panther (パンターまたはパンサー)だった。
おやっ、どこかで聞いたぞ。パンテラだ! そう、 Pantera (Panthera) だ。ほらほら、マリアにイエスを孕ませた本当の(biological)父親と言われているローマの兵士だよ。
おやおや、エピファニウス先生はそうは言っていない。しかし、その後の俗説の種本になった可能性はある。実際、エピファニウス先生は、その他のイエスの家族について事細かに書いているが、本人はワクチンのつもりで書いたのに、病気を予防するどころか、罹らなくてもいい病気を発病させてしまうこともある。
前回、「ダビンチコード」的な本へのワクチンのためと私が書いたのには、具体的な理由がある。教会で経験した議論のこともあるが、近頃読まれているある本のことが気になったからである。大学図書館にももちろんあったが、近くのビヴァリーヒルズ市民図書館でも引っ張りだこらしい。日本で翻訳される可能性もある。こりゃ大変。James D. Tabor 博士の "The Jesus Dynasty"(Simon and Schuster, 2006)である。(ちっ、逆に宣伝しているようなものか。)この人は Dan Brown のような素人でない(一応まともな考古学者で聖書学者)のもタチが悪い。私の嫌いな(嫌いといいながら DVD など何かと持っているのだが)新約学者 Bart Ehrman が推薦しているのも気がかり。みんな有名人に弱いからなー。
こんなものを読んで感激したり、そんなものだと思い込まれても困るので、種明かしに持っていく一つの計略が「妹は何人いるか、名前は?」だった。宿題を出しておけば、ネットで探せるかと思っていろいろ試してみたが、私はうまくはいかなかった。(しかし、誰かEpiphanius は探せたでしょう。それでも具体的な内容はネット上では無理だったのではないでしょうか。もし、そうなら、上記の本を読む人は Tabor 博士を信じるしかないはずです。そこがインテリの「だましの仕組み」です。Tabor博士の推理は巧妙複雑なだけでなく、Dan Brown なみの筆力がありますから、思わず引き込まれてしまいます。彼はこれが単独での2冊目の本で、自分でこの本のホームページを作っています。やる気[売る気?]満々だからなー。)
次回は、イエスの兄弟姉妹について、歴史的にどういう見方があったのか、簡単なおさらいをしてみましょう。結論を先に述べておきますと、はっきりしたことはほとんどわかりません。わからないことを、わかったようにすることを非常識と言います。